こんにちは! 美容室経営ラボでは、美容室の経営情報を最も分かりやすく伝えることを心がけています。 本コラムでは、美容室経営のリアルな現状をお伝えします。美容室経営コンサルタントとして、300社以上の美容室経営者とお話してきた実体験を元に美容室経営の素朴な疑問に答えていきます。
目次
美容室経営の基礎知識①美容室の事業所数
[st-kaiwa1]そもそも美容室って全国にどれくらいあるか知っていますか?[/st-kaiwa1]
美容室はあらゆる業種の中で最も事業所数が多いと言われています。 厚生労働省の発表データによると、その数なんと25万件。ポストが18万で信号機が20万といわれるので、その数がいかに多いかがお分かりいただけるかと思います。
美容室がこれだけ全国に立ち並ぶ中で美容室経営は上手くいくのだろうか?と疑問を持たれる方も多いと思います。
[st-kaiwa1]美容室は開業してから、どれくらい存続しているか知っていますか?[/st-kaiwa1]
美容室の生存率は一般的に、開業1年で60%、3年以内に90%が倒産すると言われています。事実過去3年間の出店数約34,500件に対して、閉店数が26,000件なので閉店確率は84%と非常に近い数字です。
この数字だけ見ると、美容室経営は大変なレッドオーションという印象を持つ方がほとんどだと思います。独立するハードルはそこまで高くない分、長期的に美容室を経営することは難しいといえます。
せっかく美容室経営を始めたのにも関わらず、売上が上がらない・経営が存続しないということを避けるために、美容室業界のマーケット規模、つまり美容室に来たいお客様の需要がどの程度あるのか見ていきたいと思います。
美容室経営の基礎知識②美容室のマーケット規模
美容室の市場規模は約1.5兆円と言われています。
下記の画像が2014年から2019年の市場規模の推移となります。
2014年の市場規模が約1兆5300億円だったのに対し、2019年には1兆5000億円を切っているように年々微減の状態が続いています。先ほどのデータを踏まえると美容室の数は増加しているけど、マーケット全体は縮小しているという非常に逆説的な結論となっています。
[st-kaiwa1]なぜ美容室は数は増えているけど、マーケット全体は減少しているのでしょうか?[/st-kaiwa1]
答えは「店舗の小粒化」が進んでいるからです。市場規模(1兆5000億円)÷数(25万件)=1事業所の年商が出ます。美容室の1事業所当たり年商は、約600万円となり、1店舗当たりの平均月商はわずか50万円となります。これが平均となるので、美容室はいかに個人店が多いか分かるかと思います。
美容室経営は「人」がいなければ成り立たない商売なので、美容師の人材難で大きな店舗を出店しにくいということも美容室の小粒化に繋がってきます。
2010年頃までは、40~50坪の大型美容室を出店することが主流でしたが、現在は居抜き物件中心に出店し、20坪程度で低投資・低リスクの出店が主流になってきています。美容室経営のスタンダードが以前と変わってきており、現在の美容業界の数字が上記のように現れてきていると言えます。
次の章では、いよいよ美容室経営の中身に入っていきたいと思います。
美容室経営って儲かるの?
はっきり言います。一般的に美容室経営は儲かる商売ではありません。 もしかしたらEARTHの國分社長のように豪邸に住み、フェラーリに乗っていることを想像する方もいるでしょうが、残念ながらそんな方はほんのほんの一握りです。 同じ美容業界の中で比べたときにエステサロンやマツエクサロンの方が収益性は高い傾向にあります。
[st-kaiwa2]美容室経営は儲からないんだ。。そんなに言われると美容室経営をする自信がなくなってきました・・・泣[/st-kaiwa2]
ここで読者の皆様にお伝えしたいのは、美容室経営で儲けている人もたくさんいるという事実があるということです。
美容室経営に限らず、経営をする以上を利益をきちんと出さなくてはいけません。美容室経営で利益を出せず、経営難に陥るサロンは何か問題があるケースが多いのです。
例えば、
・価格と施術時間のバランスが悪く、いくらお客様を対応しても利益が出ない
・必要以上に大きな店舗のため、固定費がかかりすぎている
・広告宣伝に投資ができておらず、売上の上限が上がらない
・固定費を抑えるため郊外に出店したが、人が集まらずセット面が余っている などが挙げられます。
このような悪循環に入ってしまうケースが美容室経営において非常に多いです。こうならないためにまず美容室経営の適正な収益構造を知ることから始めましょう。
美容室経営における一般的な収益構造は下記の通りです。
※月商300万円の美容室で想定しています。
※スタッフ5名、セット面6席、20坪の物件と仮定しております。
売上 | 300万円 | 100% |
原価 | 30万円 | 10% |
人件費 | 135万円 | 45% |
水道光熱費 | 15万円 | 5% |
広告宣伝費 | 15万円 | 5% |
通信費 | 6万円 | 2% |
家賃 | 30万円 | 10% |
その他経費 | 45万円 | 15% |
営業利益 | 24万円 | 8% |
総売上:技術売上+商品売上の合計
原価:施術に必要な商材(カラー剤など)+商品販売用の商材(シャンプー等)
人件費:店長35万円、スタイリスト2名×30万円、アシスタント2名×20万円 水道光熱費:総売上の5%
広告宣伝費:総売上の約5%(都市部だと10%)
通信費:総売上の約2%
家賃:総売上の約10%
その他経費:総売上の約15%(法定福利費、求人費、リース代、新聞図書費、接待交際費、減価償却費など)
上記が一般的な美容室の収益構造となります。
特に重要な項目は人件費、家賃、広告宣伝費となります。
特にこの3項目の数字を抑えながら、投資判断をしていくことになります。経営は基本的に投資対効果の高いところから投資していくことが原理原則となります。
美容室経営でよくあることは、建物にかける金額(初期投資や家賃)をかけすぎてしまうことです。月間の黒字化に時間がかかり、投資回収が遅くなりますので注意が必要です。
美容室経営における経費の見方や投資の考え方に関しては今後の章で触れていきます。
美容室経営者の年収は?
[st-kaiwa1]美容室を経営する上で最も気になる年収。美容室経営者はどの程度年収をもらっているのでしょうか?[/st-kaiwa1]
正確なデータは出ていませんが、一般的に美容室経営者の年収は美容室の総売上の10%程度が相場です。
※年商5000万円の美容室だと500万円が役員報酬という計算ですね。
ただ、これは雇用人数や自身の役割によって大きく変わります。
月商300万円で経営者自身が100万円売上を上げるプレイングマネージャーの場合と経営者が1円も作っていない場合だと月収ベースで30万円程度変わってきます。
さらに経営者の場合、年収=役員報酬は厳密にいうと違います。
年収=経営者の可処分所得と考えると、役員報酬+必要経費=年収となります。
[st-kaiwa1]経営における必要経費とは何を指すのでしょうか?[/st-kaiwa1]
必要経費とは、一般的な店舗運営にかかる費用の他に社長のプライベートと一体化しているものも経費として認められることがあります。
・社長の自宅の家賃や水道光熱費(事務所として利用する場合)
・消耗品費(事務用品や社用車のガソリンなど)
・接待交際費(取引先との接待など)
・自動車等(法人名義で社用車として購入する) など
企業は売上から経費を引いた利益に対して、法人税を払うことになります。 利益が大きいほど税金として支払う額は大きくなりますので、節税対策として必要経費として計上することも多いです。
一般的に社長はお金があると言われる理由が、役員報酬+必要経費という意味で可処分所得が多いからです。美容師の方がお金や自由を求めて独立を目指すことが多いのもこういった背景があるからです。
[st-kaiwa1]ここまで聞くと美容室経営者って年収が増えて最高じゃん!と思った方が多いと思いますがそれは大きな間違いです!![/st-kaiwa1]
年収というのは、売上が原資となります。
経営を長期的に反映させていくためには、事業成長への投資を行い、スタッフに対して売上還元もしてあげないと人は付いてきません。
そして誰よりも強い志を持ち、全責任を負うのが経営者です。
その覚悟がなく、私利私欲に走る経営者は決して長続きはしません。
使えるお金が増えるのは事実ですが、その原資となる売上を上げていくこと、スタッフの雇用を持続的に継続していくことが経営者には必要です。
ただ実際には3年で90%近くが閉店する美容室経営です。失敗しない美容室にはどのような方法があるのでしょうか?美容室経営で失敗しない5つの方法として次の章でご紹介します。
美容室経営で失敗しない方法
美容室経営失敗しない方法①初期投資・固定費を上げすぎない
美容室経営あるあるとして、開業時は思い入れがありどんどんいい素材を使い、デザインも凝って3000~4000万円ぐらい初期投資でいくというパターンが結構あります。※ダメという訳ではないのですが、持続的な成長を考えると後々尾を引く可能性が高いです。
今の美容室経営の時流は、コンパクト出店で低投資・早期回収です。
時代の変化が早くなり、大きい店舗の場合小回りが利かないことが多いです。
大きい店舗を出店して良いのは、自社のブランドが市場に浸透してきたタイミングでさらなるブランディング効果を高めたり、勝てる売上見込みが立っている時です。
特に開業時やまだ自社のブランドが浸透していない場合は、できる限り投資金額と固定費を抑えて次の投資に繋げていくために収益性を確保していくのが良いです。
美容室経営失敗しない方法②採用できるエリアに出店する
美容室経営は美容師がいないと経営が成り立たないので、採用は死活問題となります。 現在全国で美容師と働いている人は約53万人存在します。
美容室数が25万件ということを考えると、1件当たり美容師は2名ちょっとということでいかに多くの美容室で美容師を取り合っているかが分かりますね。
要するにお客様だけでなく、美容師を採用できるエリアに出店しなければ美容室経営における全ての算段が狂ってきます。今の美容室経営の時流では、エリアの中心地に出してある程度知名度を上げてローカルに展開していくことが多くなっています。最初からローカルに出す場合は、一緒にやるメンバーが決まっているもしくは自分一人もしくは二人でやることを前提とした出店になりがちです。
美容師採用をするための方法は下記でまとめているので是非さんこうにしてください。
美容室経営失敗しない方法③広告宣伝費に投資する
ビジネスの基本は集客と言われるように集客活動にきちんと投資することはとても重要です。
美容室経営は「稼働率をどれだけ上げられるか」がビジネスの肝になります。
1日1美容師当たり5名を受けることが稼働率100%としたときに人気の基準は80%以上の稼働率が埋まっている状態を指します。美容室はリピートビジネスなので、いかに稼働率を80%まで早期に持っていくかが非常に重要で、リピート率が高くなるほど広告宣伝費を抑えることができます。
稼働率が80%以上いかないうちから、広告宣伝費を抑えるよりもまずは売上の天井までいかに最速でたどり着けるか?が基本となります。
広告宣伝費のかけ方も最も即効性のある媒体からかけていくことが基本です。 今の美容業界だとホットペッパービューティーが最も即効性がある媒体だと思います。
ホットペッパービューティーで売上を早期に作り、余った収益でホームページやSNSなど固定費がかかりにくい媒体に投資をしていくのが鉄板の流れです。 最近ではグーグルマイビジネスも集客効果が高い媒体として注目されてきています。運用方法は下記にまとめているので是非参考にしてください。
美容室経営失敗しない方法④ウリとなる商品・メニューを作る
美容室にウリとなる商品・メニューがないと低価格美容室に勝てません。
この場合のウリというのは、「そのエリアで一番と呼べるもの」と指します。 デザインカラー、髪質改善等など、この領域ではうちの美容室が一番と誇れるものを作りましょう。そして、言語化できることが条件です。
言語化というのは、例えば下記のようなことを指します。
×エリアでうちのスタッフの技術が一番です
〇エリアでうちのスタッフがカット技術コンテスト受賞者が最も多く在籍しています。
商品・メニュー差別化できる要素は「商材」「接客オペレーション」「時間」「価格」などが当てはまります。
美容室業界はライフサイクルが進み、お客様が美容室を使い分ける時代に入っています。より特定のお客様のニーズに合った美容室経営を行っていくことをおすすめします。
美容室経営失敗しない方法⑤美容師の働きやすい環境を整える
採用の部分でも触れた通り、美容室経営は美容師がいないと成り立ちません。
時代の流れとともに、美容室経営者の役割が「美容師を働かせる」から「美容師が働きやすい環境を整える」という美容師ファーストの価値観に変わってきています。
元々美容師は徒弟制度で厳しくたたき上げの教育が一般的でしたが、今は真逆になってきています。美容師にGiveをする方が結果的に人がついてきて店舗数としてもスケールしているケースがほとんどです。
美容室経営は異業種参入が増えており、今後益々増えてくることが予想されます。異業種の方は基本的に美容師の働く環境を最優先することが多いので、この価値観はもっと広がります。是非美容室開業を考えている方、今美容室経営をしている方は参考にして頂けますと幸いです。
美容室経営のリアルな現状は以上になります。 このコラムを読んで頂いた方の美容室経営のお役に立てれば嬉しく思います。ありがとうございました。
美容室経営ラボではLINE@にて人気記事、最新記事を配信しているので、いち早く情報を知ることができます。現在投稿は週2~3回を目標に進めていますので是非友達追加お願いします!!
関連の記事
こちらの記事を読んだ人はこちらの記事を読んでいます